ショートショート

ショートショート

ある男たちの会話「無駄死に」

「はい、おまちどうさま。とんかつ定食」定食屋の店長がわざわざ料理を運んできた。今はバイトの人はいないらしい。「にいさんが新宿にいるなんてめずらしいっすね。仕事ですか?。いや仕事以外で来ないか」へらへらとしていて猫背で話しかけてくる若者を男は...
ショートショート

しんかんせん

「2日もいれば馴れてくるものだな」一昨日、出張で大阪に向かうために乗り込んだ新幹線が原因不明のトラブルにより制御できなくなった。どこを目指すでもなくこの電車は走り続けている。暴走してはいるもののスピードは150㎞をキープしている。窓から飛び...
ショートショート

もつれ

理路整然と並べた言葉に感情はついてきているのだろうか。引用してきた言葉に聞こえてしまう。 痴情のもつれとは怖いものだと思う。自殺、殺人、etc……物騒な事態になりかねない。 些細なことで警察沙汰になるのもいただけない。わたしはそういった者た...
ショートショート

完全予約制の本屋

その本屋は電子書籍が当たり前になった現代で、紙の本愛好家たちのちょっとした有名スポットだった。事前に連絡をとり、入ることのできる完全予約制の古本屋『わがまま』。店内にいられる時間はきっかり1時間。予約の際に指定した時間から1時間であるため、...
ショートショート

カレンダー

私はカレンダーが好きだ。1からスタートして足されて、また1にリセットされる。一日は長いと感じることが多いのに、1へのリセットが起きるとあっという間だったなと感じさせてくれる。そんな不思議な12枚の紙。28~31が最高値なのも面白い。30で統...
ショートショート

バトルスポーク

「ひいろ君、新たな武器が完成したぞ!」「やりましたね博士! これで憎きジャマー団に立ち向かうことができますね」ひいろたちの小さなヒーロー組織は、大手悪の組織ジャマー団に手も足も出なかった。彼らの財力を存分に振るった数々の強力な武器や道具にか...
ショートショート

自尊心を刈る死神

「私は魂ではなく自尊心を刈る仕事をしているものです」ある日、死神を名乗る男が言いました。彼の仕事は上司に指示された人間にと直接会って、肥大化しすぎた自尊心を刈り取り、専用のケースに回収する。そうすることで、適切で健康な魂を保つ仕事だといいま...
ショートショート

ケータイ

今朝はひどい雨だった。 靴から染みた水で足先が冷たく、気持ち悪い。男はイライラしていた。 男が道を歩いていると、大学生くらいの青年がケータイをいじってたたずんでいた。 ケータイをいじったと思えば、数歩歩いてまたケータイをいじり、また数歩歩い...
ショートショート

宇宙生物学

「先生、この学問は何の役に立つんですか」教室の真ん中の席の男の子が手を上げた。目立ちたがりの彼は、時々こうして大人に異論を唱えることがある。彼の言葉に授業のペースを少し乱されたが、まあこれから言おうと思っていたことと変わらないので、よしとし...
ショートショート

バブルゴールド

今、カルフォルニアで力をつけている○○カルテルがある。人数は両の手で数えるほどもいないが、メンバー全員がなにかしらの軍の特別組織に所属していた経緯を持っている。そのためカルテル同士の抗争で、彼らは死者を一人も出したことはない。敵からあらゆる...