ショートショート

ショートショート

自尊心自販機

「自尊心自販機?」男は公園にある自販機が異様さに足を止めました。自販機には『内側からくる自己肯定感が大切! 自分を受け入れ、自信を持つことができるようになるドリンクはいかがですか。自尊心自販機』とダサいフォントの太字で書かれていました。男は...
ショートショート

偶然の出会い

私は普通のサラリーマンだった。仕事が終わると、帰り道にいつもと同じように駅前のコンビニに寄ってビールを買って帰る。ある日、帰り道で偶然にも一人の女性にぶつかってしまった。その女性は私を強く怒鳴りつけたが、私は深く謝罪し、彼女を安心させた。そ...
ショートショート

ゆうしゅうなわがこ

「ゆうこ。父さんが相談に乗るからでてきなさい」母さんから言われてとおりの言葉を吐いた。ノックを三回、また三回とするが扉が開く気配はない。ドアノブをまわす。古くなっているのか滑らかに回らなかった。娘の様子がおかしいと、母さんから相談されたのは...
ショートショート

電撃チップ

20XX年、時代が変わっても犯罪が消えない現状に業を煮やし、政府は新たな試みをひそかに進行しているという噂が流れ、国中を震撼させた。それは、子供のころ予防接種等で病院にお世話になった際、身体に注射される、人を心臓麻痺により死に至らしめる殺人...
ショートショート

中華街リスニング

中華街は歩いているだけで楽しい。旅行できたというのもあるが、目新しさでなんでも面白く感じる。豚肉を焼いたあの食欲をそそる匂いがいたるところから流れてくる。お腹の虫がなりっぱなしだった。中華街には初めて来た。神奈川県に来たのだって初めてだ。改...
ショートショート

とがったロック

ライブやコンサートでは、マナーの悪い人間は必ずいる。動画を撮るのが禁止されていても、堂々とスマホで撮り続ける人もいる。スマホが普及した現代ではライブ会場での民度はかなり悪いものとなっていた。多くの人が禁止された撮影をし、それを注意する人がい...
ショートショート

静かな山小屋

ある冬の日、山深くにひとつの山小屋がありました。その山小屋に泊まると不思議な体験ができることで登山家たちの間では有名な場所でした。それは、亡くなった身近な人が枕元に出てくるというもので、死んでしまった大切な人と再会するためにこの山小屋を目指...
ショートショート

「事故があったんだ」

「グロいだけの、内容のない映画だ」「今年のNo.1のクソ映画だったね」駅ビル内にある映画館から友人と映画の感想を言いながら外への通路を歩く。著作権が切れたマスコットをホラー映画で起用する、と大々的に宣伝していた映画を観てきた。映画館で観るほ...
ショートショート

懐かしの味

「はらへったな」14時を過ぎて、すっかりお昼を食べ損ねてしまった。腹の虫が30回目の呼び鈴をならしている。出先の用事を済ませ、ホテルへ戻るまで30分くらい時間がある。どこか適当なところで食事を済ませておこうと思った。「『食事処 まるまる』?...
ショートショート

もてなしフレンミー

「お邪魔しまーす」「リビングに適当に座っといて、今飲み物の準備するから」「さんきゅー」俺はリビングのクッションに体重を預け、座りテーブルに買ってきたつまみの袋を置いた。「昨日の残りなんだけど野菜炒めあるわ」「いいね。つまみにしよう」友人がレ...