ショートショート

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青いボタン

木下は久しぶりの再会に胸を躍らせた。社会人になり、同級生と飲みに行くことはほとんどなかった。適当な居酒屋チェーン店で集合し、懐かしい顔ぶれに自然と笑顔がこぼれる。席につくと、山田と渡辺がすでにビールを片手に待っていた。三人でジョッキをぶつけ...
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ひりつくテトリス

ポケットから落ちそうなエコバックを手で押さえながら、夕食を買いにスーパーまで歩いていた。「おや?」と立ち止まる。ゲームセンターを見つけた。今まで気づかなかったのは2階にそれがあったからだ。1階はコンビニになっていて、上のお店など気にしたこと...
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コード・レッド

「コード・レッド。コード・レッド」機械的なアナウンスが響く。研究室内のどこかに設置されたスピーカーが、何度も同じ警告を繰り返している。警報の赤い光が不規則に点滅し、そのたびに白い壁が血のように染まる。人影はまばらで、広い空間に不自然な静けさ...
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文庫。ディスク付き

中古ショップの自動ドアが開き、涼しげな風が店内に吹き込んだ。「いらっしゃいませ」の声はない。入り口近くにはポスターが貼られ、最新の漫画やフィギュアが並んでいる。僕は1階の漫画コーナーを通り過ぎ、階段近くの文庫コーナーへと向かった。文庫コーナ...
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薄暗い映画の中で

友人の家に遊びに行ったとき、ふとテレビ画面に目を向けると、何か映画が流れていた。何の映画なのかわからなかった。ただ、薄暗い画面の中、人物が動いていて、胸のあたりをナメクジが上っているような、湿った不快感があった。施設の中で子供を捜し回る登場...
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ライトアップ

イルミネーションを見に行こうと、彼は私を連れて車を走らせた。「今話題の変わったイルミネーションがあるんだよ」9月にライトアップされている場所なんてないわよ、という私の言葉に彼は目をキラキラさせてそう返した。海沿いの道路を走り1時間がたつ頃に...
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追い込まれると弱い

質問されるというのは、結構緊張します。「小さい頃はどんな子どもでしたか?」「習い事はやっていましたか?」など答えづらいものでもなく、思い出しながら最初は順調に喋ることができました。中学生の頃の話になり、「部活動はどんなことを?」と問われたり...
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最高で最低な休日

朝は少し早起きして、澄んだ空気の中でコーヒーを一杯。窓から見える景色は、森の木々が朝日に輝いている。時間を気にせず、ゆっくりとした朝を過ごすことができて贅沢な気分。今日は日曜日。会社は休みだ。何も急ぐ必要がないその瞬間を楽しむ。午前中は創造...
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透明なかごの中で

私を見つめる彼。檻の中で私もじっと彼を見つめ返す。『外に出してくるの?』彼は微笑む。外の世界はまぶしいくらい光に満ちていて、自由に動き回れる場所のように見える。金属の転がる音とともに手がこちらに近づいてきた。ゆっくりゆっくりと焦らすような動...
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アダルトドリンク

繁華街の片隅にある、小さなバーに足を踏み入れたのは、ただの思いつきだった。仕事に追われ、心身ともに疲弊していた僕は、何か変わった刺激を求めていた。ビールや焼酎、ハイボールではもう物足りない。カラフルなカクテル。どうせなら、ちょっと風変わりな...