小学六年生の夏。太郎たち三人の少年たちは、街のはずれにあるぼろ空き家にこっそり侵入した。
そこは誰からも見捨てられた場所で少年たちはここを秘密基地にしたかった。太郎は普段、機械をばらしては、組み立て直して遊ぶことが好きだったが、友人の秘密基地をつくるという計画にわくわくし、生まれて初めて法を破るような行動をとった。
太郎たちはその場所をすぐに気に入り、夏休みは毎日のように通った。
ある日、太郎たちは秘密基地に地下室があるのを見つけた。そこは小さな町工場の一部屋のような、工具や設計図がテーブルに散乱しているような場所だった。
その部屋に一つ異様な存在感を放つ機械があった。
それは畳サイズの鉄板にの上に小さな操縦レバーがついた、昔の漫画にでてくるタイムマシンのような見た目をしていた。
少年たちは大いに喜び近くにあった説明の書かれたノートを手に取った。そこには失敗作と殴り書きされていた。
内容はほとんど理解できなかったが、書かれている絵や数式を見るだけで太郎は面白かった。
「このタイムマシンを完成させよう」太郎たちはそれからノートに書かれたことを解析する日々をおくった。
何年もたち高校生になるころには太郎以外の二人は一向に理解できないタイムマシンに興味を失っていた。
太郎だけが熱心に研究に取り組んだ。
他の勉強や友情も大切にした。タイムマシンを研究する中でたくさんの科学知識を学び、難しいことに取り組むための学び方を学んだ。
人に勉強を教えることも増え、友達に頼られることも多かった。人との縁が増えると自然と彼女もできた。
社会人になると家を買って、そこにタイムマシンを移動させた。いまだに完成はしていないが、完成に近づいている確信があった。
結婚し、仕事もそれなりに忙しくタイムマシンの研究につかえる時間は減った。
それから定年を迎えやっと腰を据えてタイムマシンの研究に取り組める時間ができた。
七十歳を過ぎたころ、タイムマシンが起動した。それは時間移動の初テストを行う前日のことだった。
光を放った瞬間、目の前から消えた。一分もしないうちにタイムマシンは戻ってきた。
「なんてことだ」太郎は失望と笑いが込み上げてきた。タイムマシンは小学六年生の夏に見つけた姿で戻ってきたのだ。
この装置には大きな欠陥があること、そのためこのタイムマシンは放置されていたことを太郎は理解した。
太郎はタイムマシンの研究をここで終わりにした。残りの時間は自分を大切に思ってくれる、妻と過ごそうと決心した。
タイムマシンを破棄しようと思ったが、この装置のために用意した地下の施設や思い出が邪魔をして壊すことができなかった。
しかたなくそのまま残し、研究結果を書いたノートに欠陥品の内容をかいて地下室へ放置した。
数十年、もしかしたら百年と長い時間がたったころ。どこかの少年たちは喜びともに指を差す
「このタイムマシンを完成させよう」