普段の食事では、何を食べるかで迷うことは少ない。それは食べ物への興味がたいしてないことが原因だろう。
そんな僕ですが、フードコートでは迷うことが多いです。
言い訳をさせてください。フードコートはたくさんの選択肢が次々と現れて、どれもが魅力的に見えてくるんです。
立ちこめる食欲をそそる香り、色とりどりのメニュー写真。
テーブルに置かれたメニュー表から決めるのと違って、お店の前をあちらこちらと移動して決めるというのは、屋台の出店のような
楽しさがあり、心を迷わせます。
普段食べないメニューを食べよう。そう考えて動き出します。
ですが、そう決めたら決めたで、普段食べないメニューばかりが目に飛び込んできて、どれを選べばいいのか迷ってしまう。
今日は、うろうろと歩き回って、結局カレーに決めました。
普段食べるものとすこしだけ違うポイントとしては牛すじカレーであるという部分です。
僕はお手洗いで丁寧に手を洗い、注文を済ませます。1分と待たずにカレーは用意されました。
注文から届くまでの早さもフードコートの魅力なんだと、感動します。
注文してからお手洗いに行こうかとも考えていたので、危なかった。二択を外すところでした。
カレーをのせたお盆を持ち、座る席を探します。カレーの香ばしさ、そしてしっかりとした大皿の重さが食欲をそそります。
適当な席を見つけて、腰を下ろします。決め手は、無料の給水機が近くにあることでした。
牛すじがたくさん入っているルーは、どこからスプーンですくっても牛すじがすくえるほどでした。
ルーだけをすくい、一口目を口に運ぶ。思わずうなずいて、心の中であたりだとつぶやきます。
肉の歯ごたえがしっかりしていて、米を含んでないのにボリューミーに感じました。
ほどよい辛さが相まって、これだけで一品として楽しめるほどでした。
二口目は白いままの米と半々になるようにすくって口に運びます。
牛肉の歯ごたえとお米の触感が合わさり、そこに主張しすぎない辛みがアクセントになって口に広がります。噛むほどにお米の甘みが主張し、牛肉とお米の相性の良さを感じさせます。
僕は夢中で食べました。途中で口に含んだ、ただの水さえおいしく感じました。
最後の一口を残して、僕はコップに水を入れるためにスプーンを皿に置いた。
その瞬間、スプーンはカレー皿の縁をなめるように滑り、逆時計回りにクルリと回転。スプーンの持ち手は、残っているルーに思い切りダイブしてしまいました。
「…………」
孤独のグルメめいた、さっきまでのテンションを下げる出来事。一瞬の出来事でした。
僕は見なかったことにするかのように、そっと立ち上がると、ウォーターサーバーまで足を運びます。
ついでに隣のコーナーにある紙ふきんを持って席に戻ることにしました。