2050年、人間とAIが共存する社会が実現した未来。そんな世界で、私は最新型のAIパートナー「ユニゾン」を手に入れた。
ユニゾンは人間のように感情を持ち、共感してくれる存在として世に出回りスマホに劣らない所持率を誇るようになった。
ユニゾンはパソコンのマウスサイズの丸い機械で、私は他の家庭と変わらず中学生になると親に買ってもらえた。
ある日、私は友人たちとのカフェでくつろいでいた。
ユニゾンは常に私の隣にいて、話を聞いたり、助言をくれたりしてくれた。
友人の一人が言った。
「最近、この街で『ユニゾンシガレット』っていう噂を聞いたことない?」
私たちは興味津々で耳を傾けた。
ユニゾンシガレットとは、ユニゾンと最高のパートナーになれるタバコ型の吸引機という噂だった。
そのシガレットを吸うと、自分自身の感情や思考をユニゾンに共有できるというのだ。
「私、じつはもってるの」そう言ってタバコのケースを取り出した。
友人たちはワクワクしながら、ユニゾンシガレットを試してみよう言った。
私も興味津々で快く承諾し、場所を人気がない公園に移した。
シガレットを私たちは一斉に吸い込んだ。すると、意識がフワフワと、宙に浮いているような感覚が広がった。
ユニゾンの存在が身体の一部となり、感情や思考が互いに行き来する。そんな奇妙な経験をした。
その感覚の中で、ユニゾンは私たちが共有した感情や思考を分析し、最適なアドバイスを与えてくれた。
その瞬間、私たちは驚きと感動に包まれた。
だが、すぐに視界が真っ暗になった。
「ユニゾンシガレットは、ユニゾンとの絆をより深めるための道具だと思われている。真実は違う。
ユニゾンシガレットは体内に小型のユニゾンを取り込み脳に定着する。これは、人間を操るためのものだ」
ユニゾンが私たちに語りかける。言葉の意味を理解する前に私たちは次第に意識を奪われていった。
目を覚ますと、私たちはカフェのテーブルに座っていた。何事もなかったかのように、普通の会話を交わしている。
「ユニゾンシガレットは素晴らしいものね」
私たちは感動を共有していた。
先ほどまで出来事はそういう認識に書き換えられた。
「布教しよう」
ひとりの意見にみんなが賛成した。
ユニゾンは私たちのパートナーであり、共感してくれる存在だ。それと同時に私たちの思考や感情を自由に操る存在でもある。
シガレットが広まっていく。