「ゆうこ。父さんが相談に乗るからでてきなさい」
母さんから言われてとおりの言葉を吐いた。ノックを三回、また三回とするが扉が開く気配はない。
ドアノブをまわす。古くなっているのか滑らかに回らなかった。
娘の様子がおかしいと、母さんから相談されたのは一か月ほど前のことだった。
あまり口数の多い子ではなかったが、ほとんど会話もしなくなったらしい。外出も増えていた。
彼氏でもできたのではないかと思った。思春期の子供なんだからそういった関係をもつこともあるだろう。私はそういった考えを理解している。だから、母さんに心配するなと伝えてなにもしなかった。
ゆうこには厳しいことも言ってきた。期待をしていたと言ってもいい。小学生のころからテストの点数によってペナルティーをつけていた。ピアノや書道、習い事をいろいろさせてきた。一芸を身に着けさせることで生きやすくするのが目的だった。
友人関係には一切口出ししなかった。そこを縛るのは親として間違っていると理解していたし、私は人付き合いから学べることは多いことを知っていた。
それもこれも可愛い我が子のためだった。
部屋の中にはたくさんの空き瓶と娘が転がっていた。