20XX年、時代が変わっても犯罪が消えない現状に業を煮やし、政府は新たな試みをひそかに進行しているという噂が流れ、国中を震撼させた。
それは、子供のころ予防接種等で病院にお世話になった際、身体に注射される、人を心臓麻痺により死に至らしめる殺人ナノチップらしい。
政府のごく一部の人間がボタン一つで、特定の人間を死に至らしめることのできるというものだった。
噂の出どころは不明。政府はもちろん否定したが、ネット上で騒がれ大きな話題となった。
医者や学者は検証の結果、そんなチップは存在しないと結論付けた。
しかし、発表した学者たちも政府のグルであるだと言われた。グルであるというそれらしい証拠が毎日の様に報道される。
チップの存在を完全に否定できないのには理由があった。
それはこのナノチップの情報がでた時から、心臓麻痺で亡くなる人が増えたからだった。
そのせいで電撃チップを存在するということを裏付けていると執着する人物たちを作り上げ、世の中は大混乱となった。政府への不信感はさらにましていった。何度も内閣の解散危機が訪れている。
だが、殺人チップの噂は悪いことばかりではなかった。
チップを使って秘密裏に犯罪者が裁かれているという噂は犯罪への抑止力となっていった。
犯罪の軽度を問わずに裁かれること。政府によって常に監視されている感覚は罪を犯そうとする者を一歩踏みとどまらせる効果があった。
そんな中チップを起動することのできるという噂のリモコンがブラックマーケットで売られるようになった。
リモコンのボタンを押すと人の体にある殺人ナノチップを起動させて、心臓麻痺を簡単に起こせるものという触れ込みだった。
だが、ブラックマーケットに出回るものにそんな効果はなく、偽物の売買されている市場として注意喚起がテレビでもされた。
噂によって噂が生まれ、それが価値になる世界であるという嘘の世界に、日記をつづる私はうんざりしている。