楽々キラー

ショートショート

今、日本で大人気のMMORPG『ジャングル・フロンティア』、通称ジャンフロ。

VR機器装着して、広大なゲームの世界に没入することができる。

俺はその世界でK.G.とルークというプレイヤーネームのアバターと遊んでいる。

「リット。今日はキノコ集めしようよ」

「わかった。じゃあ古竜の密林だな。K.G.もそれでいいか?」

「OK。っとその前にアイテムを預けてくるわ。手持ちが一杯で素材が拾えない」

俺たちは準備を終え、目的地に向かった。キノコ集めは珍しいものも拾えて順調だった。当分は補助系アイテムの生成に困ることはなさそうだ。

「それにしても珍しい。ルークが素材集めをしようだなんて。君は戦闘大好きサイヤ人だと思っていたよ。討伐以外で自分から誘ってくれるのは初めてじゃないか?」

「……ああ、まあそうだったかな……」

なんだか返事がらしくなかったが、まあただの雑談だしいいか。

珍しいといえばK.G.がさっきから動いていない。

トイレのため離脱したのかと思ったが、そういう時は仲間に一言いれるはずだが。
よっぽど切羽詰まっていたのだろうか。VRゲームをしていると尿意の限界を見誤ることはあるあるだ。
VR体験したての初心者はそれでベッドを濡らしてしまうことも珍しくない(1敗)。

「K.G.。おーい、だいじょぶかー」

K.G.の反応がない。

「ルーク!なんかK.G.様子が変なんだよ、ルーク?」

いつの間にかルークの反応もなくただK.G.を見つめているばかりだった。

翌日、警察の事情聴取を受けることになった。
K.G.こと小谷平助がベッドの上で刺殺されているのが母親に発見されたからだ。

殺害された時刻と思われる時間に彼はジャンフロをプレイしていたらしい。
VR世界にダイブしていたため、抵抗した痕跡は見られず指紋や証拠になる手掛かりが出てこなかったらしい。母親はその時間パートで家にいたのはK.G.だけだったそうだ。

「ジャンフロをしている間変わったことがなかったか?」

警察からそう聞かれたので、ありのままのことを話した。

話ながらルークがK.G.のプライベートのことをいくつか質問していたことを思い出す。

「今家には一人なのか」「家の人が帰ってくるのは何時くらいとか」「部屋は2階にあるのか」

住所をなぜ知っていたのかなど細かいことは分からないが、ルークがVRの世界でK.G.の現実世界の情報を多く手に入れていたのは間違いなかった。
警察はルークを容疑者として捜査している。

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