一同が大広間に集まっていることを確認するように探偵はまわりを見渡した。
「待ってください。あなたは本当に犯人が分かったとそうおっしゃるのですか?」
依頼人の妻である頼田瞳は30分以上待たされているせいか、苛立ちを隠せずに探偵に問いかける。
探偵はニコリとうなずく。
「では、今回の毒島来苦さんが殺された事件について順を追って説明します___」
よく響くバリトンボイスで探偵はここにいる全員に対して声を放った。
事件の全体の流れ。犯人が使ったトリック。全て語られた。説明を終えた探偵は鋭い眼光を光らせ、全員の注目を集めるように一人の人物を指さした。
「これらの一連の行動をできる人物はただ一人! 家政婦の罪野罰子さんあなたしかいないんですよ」
一同の視線が彼女に集まる。探偵はテーブルに乗ったコップを手にとり、中の水を一気に飲み干す。
緊張の走るこの空間を探偵は楽しんでいる。彼の生き生きとした表情、声からそれがうかがえた。
「動機ですが、あなたは来苦さんとが男女の関係にあったことは明らかでしょう。おそらくその関係に亀裂が入ったのは二か月ま……ぇ……」
パリンッ
床にガラスの割れる音が響いた。一同が割れたガラスを注視する。
先ほどとは対照に顔が醜くゆがみ、苦しむ探偵。唖然として動けずにいる関係者。ただひとり罪野もりこだけの口元が笑っていた。