手紙が来た。これで14日連続。
差出人はyume子。便箋が一枚。ただし白紙。なにも書かれていない。
不気味だが警察に言うのも億劫、ましてや鑑定依頼する気にもなれず二週間がたった。
二週間前の自分を思い出してみる。俺の人生に変わった要素はない。
何も変わらないはずなのに手紙が届くこと。これだけが変わった。
白紙の手紙に最初はミステリー小説のようなワクワクがあった、が正解を教えてくれない問題にモチベーションが続くわけもなく、三日目にはすでに中身を確認しては捨てるだけの作業になっていた。
封を切って中身を確認する。
yume子の正体はだれなんだろうか。同じ大学の古橋さんだったらいいな。
そんなわけないだろうし、あったとしても印象が変わってしまう。
まあ、日常のスパイスを提供してくれるのはありがたい。大学の友人にもちょっと変わった話のネタを提供できたわけで。
今日も届いた手紙を開けてみる。「何も書かれていないか」何の疑問も持たずゴミ袋に放る。
毎日大学から帰ってくるとドアの郵便受けに挟まれた状態で投函されている手紙。一度も配達員の人と鉢合わせしたことはない。
細かな違和感は一日の長い時間に削られて一日の終わりにはなくなってしまう。
切手が貼ってないことに気が付いていたのに。
危機感は階段状になってはいない。
だからデッドラインがどこかの判断が鈍ってしまう。気付くチャンスは雑多な出来事で埋め尽くされてしまう。
自宅のチャイムが鳴った。