勘違いのプレゼント

ショートショート

しゃべれない?女の子とであった。

彼女はしゃべろうとしない。食事のためにしか口を開くことはない。

何を伝えようとしているのかこっちの意図はわかっていることは確かだ。

彼女とは一週間前に家から徒歩7分、杉の木に囲まれた、花粉症の方が決して来ることがないだろう公園で出会った。

おろおろと周りを見渡しては空を見たり、地面を見たりしているその子は小学校高学年くらいだろうか。

困っているのかなと思い、中学生である私はお姉さん気取りで彼女に話しかけた。

「なにをしているの?困りごと?」

「…………」

小学生はじっと私の目を何かを訴えかけるように見つめる。そんな熱視線を向けられたのは初めてだ。少し照れる。

いやいや、照れてる場合じゃない。

「…………」

そこから5分以上の沈黙が続いた。待てど待てども彼女は口を開かない。途中何かをあきらめたようにがっくりをうつむくこともあった。

「こわくないよー? ゆっくりでいいからどうしたのか伝えてくれると嬉しいな」

それからまた5分の沈黙の末、ある結論が頭をよぎった。

この子はしゃべらないのではなくしゃべることのできないのではないか、と
バックから10月にもなるというのに2ページ分しか文字の書かれていないノートを取り出し、シャーペンと一緒に彼女に渡す。

「これ良かったら使って」

手に取る彼女はノートを珍しそうに眺め、左からぺらぺらと今度は右からペラペラとめくっていくが全く文字を書こうとしない。

何なのだろうこの子は? 私の意図が伝わらなかったのか。

「それに文字を書いて教えて?」

「…………?」

首をゆっくりと傾げられる。その仕草がなんとも可愛いが、どうしたものか?

かなり困ってしまった。スマフォで警察を呼んだほうがいいのかもしれない。かばんからスマフォを取り出そうとしてその子から目を離したほんの一瞬のこと、彼女の姿を消していた。

『地球旅行はどうだった?』『やさしい地球人に出会った』

『僕たちみたいにテレパシーがつかえないのにかい』『ええ、でも優しさを感じたわ』

『それに、プレゼントをくれたの。とってもいい子よ』『プレゼントの黒い部分は文字かい? うらやましいな! 僕たちの星にはない知的文化のひとつじゃないか』

『あなたも少しは興味持った?』

文字を必要としない進化を遂げた宇宙人はテレパシーで地球について楽しく語り合った。

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