新鋭ラーメン屋

ショートショート

昼過ぎになり、腹の虫もうるさくなってきた。私は出張先でさっと食べれるお店を探した。

先方との予約している時間があるため、ゆっくりはできないからだ。

たくさんの店が並ぶストリートに入った。

食事処が並び、空腹をくすぐる匂いが左右からただよう。

ここでラーメンかハンバーガーでも食べるとしようと決めた。

ラーメン屋を見つけた。店前には味噌ラーメン一筋とかいてある。

「ここにしよう」と決めて中に入る。

店に入ると、おひとり様用のテーブルまでのご案内、と書かれた張り紙があった。

空いている席にお座りください。テーブルにある注意書きを確認し、ご注文ください、とある。

ジャズを10倍明るくしたような騒がしいBGMがした。

うるさいな、と思いつつ案内書きに従い、店内の奥へと進む。

U型のカウンターがあり、学校机ほどの空間で両側に仕切りがつけられている。

私は適当なところに座り、テーブルまわりを確認した。

正面も簾のようなもので塞がれていた。

テーブルには注文用のタッチパネルが設置されている。ラーメンは1種類しかなかったので
私は味噌ラーメンの大盛と小ライスを注文した。

横に木の札がいくつかぶら下がっているのが気になった。

必要に応じて、この木の札をテーブル奥にある穴に入れる仕組みになっているようだ。

一人で食事することに特化しているだけあって、店員さんとの会話も極力減らすための配慮なのだろう。

木の札に書かれた文字を見る。

『店員を呼びます』
『お子様用食器が欲しい』
『周囲の音・声が気になる』
『陽気な音楽をかけます』
などがあった。

なるほど、さっきからかかっている音楽は誰かが木の札を使ったんだな、と納得した。

注文を待つ間もお客さんの出入りが頻繁にある。昼過ぎだというのにこの感じだと結構人気のお店だったんだなと理解した。

目の前の簾が開いて、店員さんが顔を出す。

味噌ラーメンと小ライスが届いた。その場でお会計を済ませると、簾が下ろされる。

まずはスープの一口。ほのかにニンニクが香り、口の中に旨味が広がっていく。

「うまい!」

この店を選んで正解だった。そう思わせるほど、ラーメンはおいしかった。

夢中で食べていると、BGMがとまった。『周囲の音・声が気になる』の札を誰か使ったのだろうか。

食べ終えて、水を喉を鳴らすように一気に飲み干した。ラーメンの後の、この一杯は格別だ。

私は木の札から一つ取り、テーブルの穴に入れる。

『おいしかった。また来ます』

とかかれたその木の札は今の私の感想にピッタリのものだった。

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