『君と知らずに恋の行方』のリメイクが発売されていた。
BGMが特に人気で、界隈でもそこが今でも評価されている名作だ。
アニメ化もされているし、コンシューマー版もでていた。
リメイクが出ることは情報として知っていたが、もう20年以上前の作品だし発売日は知らなかった。
たまたまエロゲーも取り扱っているゲームショップにきて、すでに発売されていたのだと知った。
「なつかしい」表紙のキャラクターたちを見るだけでぐっとくるものがあった。
どのキャラから攻略したのか、一番好きなシナリオは誰だったのか、いろんなことを思い出した。
パッケージの裏を見る。
違和感がある。
なんだっけかと思ってすぐにその正体がわかった。
このゲームには続編として出された作品がある。
正確には続編ではなく追加ヒロインが増えただけの作品だが。
無印版で人気だった一人と続編で初登場したキャラクターの二人が攻略キャラとして追加された。
無印で人気の一人は攻略キャラとして名前がでてる。
だが、もう一人のキャラクターがどこにも見当たらなかった。
公式サイトを見てみる。
ここにもいない。
ヒロインが一人存在を消されていた。
理由は三つ思いつく。
まず続編はコンシューマー版として出ているためエロゲーではない。
エロの要素は省かれて一般向けの作品になっている。
今回のリメイクはエロゲーとしての『君と知らずに恋の行方』のリメイクなので登場できない制作サイドの理由があったとか。
二つ目は続編がそもそも売れなかったから。
どこまで売れていたのか調べたわけではないが、コンシューマー版というのは買う層がより限られているし、売り上げが芳しくなかったケースはよく耳にする。
続編で初登場のキャラクターの存在がそもそも認知されていなく必要ないと判断されたとか。
三つめは続編で登場したヒロインのシナリオがそもそも面白くなかった。
シナリオがね……面白くないんですよ。
本当にポッとでに追加キャラって感じがありありとね、してる。
だからなかったことになったんでしょうね。
「その子はどこへ行ってしまったのか、もうお分かりですね。そう、この私がそのヒロインなんですよー!」
うらめしやー、と言いたげに両手を前にぺこりと倒して彼女はそう告げた。
彼女曰く、いないことにされたヒロインの恨みが呪いとなって現実に形をなした存在なのだと説明された。
目の前の緑髪メガネのブレザーを着た幽霊は深夜の潰れた中古ショップで僕に語った。
中古商品の卸売業者として、商品の確認を行いに来たら、ゲームソフトコーナーのガラスケースの下からゲームソフトを見つけた。
それを手にした途端、目の前にこの少女が現われ、話始めたのだ。
「リメイクって怖いね」
気の利いた言葉もでなかった。