2024-02

ショートショート

自尊心を刈る死神

「私は魂ではなく自尊心を刈る仕事をしているものです」ある日、死神を名乗る男が言いました。彼の仕事は上司に指示された人間にと直接会って、肥大化しすぎた自尊心を刈り取り、専用のケースに回収する。そうすることで、適切で健康な魂を保つ仕事だといいま...
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ケータイ

今朝はひどい雨だった。 靴から染みた水で足先が冷たく、気持ち悪い。男はイライラしていた。 男が道を歩いていると、大学生くらいの青年がケータイをいじってたたずんでいた。 ケータイをいじったと思えば、数歩歩いてまたケータイをいじり、また数歩歩い...
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宇宙生物学

「先生、この学問は何の役に立つんですか」教室の真ん中の席の男の子が手を上げた。目立ちたがりの彼は、時々こうして大人に異論を唱えることがある。彼の言葉に授業のペースを少し乱されたが、まあこれから言おうと思っていたことと変わらないので、よしとし...
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バブルゴールド

今、カルフォルニアで力をつけている○○カルテルがある。人数は両の手で数えるほどもいないが、メンバー全員がなにかしらの軍の特別組織に所属していた経緯を持っている。そのためカルテル同士の抗争で、彼らは死者を一人も出したことはない。敵からあらゆる...
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「たすけて」

「くそっまたやられた」感情をぶつけるように欠けたチーズをゴミ箱へ叩き入れる。この家に不法入居しているあいつの仕業に違いない!男は深く深く深呼吸した。あいつが現われてから男が身に着けた対処法のひとつだった。頭に登った血がスーッと下に降りていく...
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さがしもの

「こんにちは、藤田正樹さんですよね。1分だけお時間よろしいですか?あっ、失礼しました。わたくし」ゲーセンからの帰り道に声をかけられた。名刺を渡される。『渋田探偵事務所 渋田さなぎ』とあった。「探偵さんがなんのようですか?」「実は、探田雄介さ...
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勘違いのプレゼント

しゃべれない?女の子とであった。彼女はしゃべろうとしない。食事のためにしか口を開くことはない。何を伝えようとしているのかこっちの意図はわかっていることは確かだ。彼女とは一週間前に家から徒歩7分、杉の木に囲まれた、花粉症の方が決して来ることが...
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新鋭ラーメン屋

昼過ぎになり、腹の虫もうるさくなってきた。私は出張先でさっと食べれるお店を探した。先方との予約している時間があるため、ゆっくりはできないからだ。たくさんの店が並ぶストリートに入った。食事処が並び、空腹をくすぐる匂いが左右からただよう。ここで...
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puppet&seek

人型のぬいぐるみを使った降霊術がある。puppet&seekと呼ばれる外国で10年ほど前、流行ったものだ。オカルト情報をやりとりする掲示板を毎日眺めることが習慣になるほど、そういった話が好きな俺は一人でもできるその降霊術を試してみることにし...
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決めつけシャーロック

依頼人が私の探偵事務所に入ってきた。彼は立派な髭を生やし、太った体つきの初老の男性だった。まず、私は彼をソファに促し、緑茶を差し出した。「何か重大な出来事に巻き込まれたのではないでしょうか?」「どうしてそれを?」「あなたが強く握りしめている...