質問されるというのは、結構緊張します。
「小さい頃はどんな子どもでしたか?」「習い事はやっていましたか?」など答えづらいものでもなく、思い出しながら最初は順調に喋ることができました。
中学生の頃の話になり、「部活動はどんなことを?」と問われたり、ここまでは問題なしです。
高校生の頃の話になりました。
部活動の質問に、僕は高校時代は帰宅部でしたのでそう答えます。
雲行きが怪しくなりました。彼はうなずきながら、視線をテーブルに落としました。
「委員会などはどうですか?」と投げかけられますが、こういったこともやらない大人しい人間でしたのでやっていないときっぱりと答えます。
話題が広がらない。沈黙がじわりと重くのしかかってきました。
これまでの質問たちの意図は自分なりに理解しているつもりでした。
強みを知りたいという事でしょう。
「その時その時でどんなことに打ち込んでいましたか?」というのは、これまでどんなことを頑張ってきたのか、その中でどんな技術が身についたのか。
それが巡り巡って御社に貢献できる能力になりえるのか。それを判断する、引き出すためのものといえると思います。
高校生質問編になり、その部分が消失してしまっていました。
僕は高校時代、頑張ってこなかった分がここにきて問題になりました。
「高校生でなにか打ち込んだことはありませんか? ……どんなささいなことでもいいですよ」
彼の問いに対して、言葉が詰まります。全く出てきません。
そもそも僕は、追い込まれると緊張がブーストされるタイプの人間です。
この時点で質問の意図を頭から抜け落ち、ただただ焦って、視線がきょろきょろ。
そんな僕は、今回の状況でなにか答えなきゃ、と頭を働かせます。そして、失敗します。
「えっと、カラオケなんかはよく行っていたかも……」
「学生生活の中の話でお願いしますね」
優しく軌道修正してね、と言われ、余計なことを言った、と顔が赤くなりました。
結局、『資格取得を頑張ったかも』という話に落ち着かせ、何とかそれっぽい答えをひねり出しました。
恥ずかしい。叫びたい気分になりました。
「それでその会社には落とされちゃったと?」
二か月ぶりに会った友人と車の中で最近の失敗を打ち明けていた。
友人はドンマイ、と肩を二回たたく。
「いいや違うよ」
「なにが?」
「面接じゃなくてハローワークの職業相談の時の話だよ」
友人の勘違いを訂正する。えー、という顔とともに友人がつぶやいた。
「ならそんなに緊張しなくてもいいのに」
「ほんとにね……でも、追い込まれると、どんな時でも緊張するんだよ」
「お前らしいな」