篩の国

ショートショート

絶叫と、鈍い音――硬いスイカを叩き割るような音が響いた。隣の家の男が選別の対象になったらしい。

この国では、誰もが定期的に「選別」を受ける可能性がある。
選別は全市民を対象に行われ、その結果によって人生が決まる。選ばれた者は社会の上位層に進むことができ、失敗すれば下層へと転落する。
この制度によって社会が良い方向に向いていることも事実で、多くの人間が、疑問に思いつつも、受け入れている。

今日もまた、選別が行われている。
「合格」者は喜び、「不合格」の者はその場で手錠をかけられ、連れて行かれる。抵抗するものは武力を持って制させる。

サトウは二階の自室で、奥歯を噛みしめた。
彼は「選別」制度に対する疑念を抱いている。半年前に父親が「不合格」の選別の元、連れていかれたからだ。
それ以来、彼がレジスタンスと接触を図るようになったのは、自然な成り行きだった。

「サトウ、今日の集会に来られるか?」
切手のない手紙の封を開けると、誘いの言葉と集会の日時だけが書かれた紙を確認する。
彼の参加するレジスタンスの集まりが今週も行われる。この手紙が来るということはレジスタンスが検挙の対象にならず、存続し続けられているという証でもあった。
この国には、選別に抗議する団体はいくつも存在する。その中でも、最も過激な手段を取る組織が『レジスタンス』と呼ばれていた。もちろん国はそんな呼び方を認めずテロ組織として扱う。

サトウは普段から使われない市民体育館に訪れた。
既に百人近い人数が集まっていた。彼らは皆、選別に疑問を持つ者たちで、この国の制度を変えるべく日々活動している。
サトウの参加するレジスタンスは活動団体の中でも特に人数が多い。ここにいる人たちは支部の一つに参加するものにすぎず、全体だと五万人を超える大所帯となっていた。
当然、政府の監視も厳しい。

「次の作戦は、選別のシステムそのものを破壊する」
リーダーが壇上に現れ、重々しい口調で語り始めた。誰一人として声を上げなかったが、会場全体に漂う緊張感が、空気をさらに熱くさせる。

「この国のシステムは強大だ。我々が勝つために、いまから重大な作戦に参加してもらうメンバーを発表する」
彼は、一人ずつ名前を読み上げる。呼ばれた者に拍手が起こり、壇上へと移動していった。

サトウは次は自分が呼ばれないかと、期待をリーダーに向けながら眺めていた。

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