運動が苦手な僕は、珍プレーをすることで友人たちの間で有名になってしまっていた。不名誉だ。
その珍プレーが見たいからという理由でスポーツに良く誘われる。
嫌なのではあるが、大学の友人の誘いを断るのはまだ長い大学生活の致命的なダメージになりかねない。
断れない僕は毎度遊びに参加することにしていた。
彼らのことを悪い人間だと勘違いしてしまうかもしれないので、ここで補足をひとつ。
僕の友人は意地悪をしたり、反社会的行動をとるような悪い性格の人たちではない。
生きていく中で笑いを見つけるのがうまいだけだ。彼らのイメージを勘違いさせてしまっていたのならここで謝罪を。話を戻そう。
今回遊ぶスポーツはボーリングだった。
ボーリング場は、僕にとっては意外なことに夜中までやっているらしかった。
夕食を食べ、ゲーセンで時間をつぶしていると、夜10時過ぎに一人の友人が近くのボーリング場に行こうと提案した。
ボーリングは人生で二度目だと思う。小さい頃に一度やったことがあるのはおぼえているが、それ以外の記憶はない。
ルールはわかるが、投げ方がわからない。そんなスポーツだ。
僕以外の三人の友人が投げ終わり、僕の番になった。
友人たちから、投げ方をレクチャーしてもらい頭の中で真ん中のピンを倒すイメージをする。
ボールを持ちレーンの前で一呼吸。そしてプロのように胸あたりまでボールを持ち、構える。
この時点で僕の腰が引けていることやボールの重さ、指を入れるサイズがあっていないことを付け加えておく。もちろんその時は気付いていないし、イメージの中ではストライクを取っていた。
助走をつけてボールを勢い良く投げる。
指から抜けるタイミングが明らかに遅かった。つまりボールの滞空時間が長くなる。
腰が引けていたこと、助走の足並みが揃っていないことで、斜めに向かってボールは放たれた。これで珍プレーの方程式が出来上がってしまった。
ボールはドスンと大きい音を立てて、勢いだけは一丁前のスピンと共にゆっくりと隣のレーンを走行。右側だけに残っていた3本のピンをスローペースでなぎ倒す。スペア。
自分のレーンを見る10本のピンはきれいなままだ。
やってしまった、と気付いた時には友人からの拍手と笑い「ナイススペア!」とからかわれている。
隣のレーンの人たちに頭を下げる。中年の男性3人グループだった。
「すみません」と謝りに行くと一人の男性からハイタッチを求められる。
向こうの人たちも拍手をしながら笑っていた。恥ずかしさともうボーリングはしないという決意が押し寄せてくる。
優しいおじさんたちでよかった。僕はハイタッチをかわして自分のグループに戻った。