中華街リスニング

ショートショート

中華街は歩いているだけで楽しい。
旅行できたというのもあるが、目新しさでなんでも面白く感じる。

豚肉を焼いたあの食欲をそそる匂いがいたるところから流れてくる。お腹の虫がなりっぱなしだった。

中華街には初めて来た。神奈川県に来たのだって初めてだ。
改めて思ったのは、中華街にいる人は中国の方が多い。

働いている人の多くが中国人で日本語の受け答えもできる人たちばかりだった。
自分は母国語が喋れないので、こういう時簡単に尊敬をおぼえてしまう。

中華料理店の数に圧倒され、かなり歩いた。料理店が多すぎて、判断ができなくなってしまっていた。

友人と相談して、一旦店の少ない所へ移動した。中国らしい建造物を近場で見たかったし、ゆっくり相談する時間が欲しかった。

お寺を彷彿させるただずまいの建造物がいくつもあった。
そんな建物の一つのそばに来た時に目にしたのが、二人の女性だった。

一人はチャイナ服を着て、もう一人に写真を撮ってもらっている。どちらも日本人に見えた。

中華街という場所にチャイナ服はたしかにピッタリなイメージだ。
だが、他にチャイナ服を着ている人には出会わなかったためコスプレというのがしっくりくる。

本来ならそのちぐはぐさは無いはずなのに。
らしさを追求したジオラマを見ているような、そんな気がした。

友人との立ち話が済んで、移動を始めた。中華街へきてかれこれ1時間は立っている。

人の多い喧噪とした店回りを歩いていると、ある現象が起きはじめた。
聞こえてくる言葉がなんでも中国語に聞こえるのだ。

観光客の日本人だろうと関係なく、中国語風に聞こえるという現象が正しいだろうか。
日本語を聞き取る能力が一時的に著しく落ちた。

こんなことも不思議なこともあるのかと友人に、僕は面白いそうにこの現象を話したら「俺も今そんな感じだ」と笑っていた。

僕たちは中華料理とビールの組み合わせに舌鼓を打ち、宿泊宿へ帰った。

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