ある未来のお話。テクノロジーが発展し、人々の生活にロボットが欠かせない存在となった時代のことです。
5歳になったばかりの少年は、『フレンド』と共に楽しい日々を過ごしていました。
『フレンド』は人間良成長プログラムの一環として、国から義務的に提供されたロボットです。
ロボットは5歳から7歳。7歳から10歳の2回に分けて、別の性格を持つロボットが提供されます。
”人間は行動を共にする相手で性格や行動が変化する”というデータを元に作られた『フレンズ』は、
非社会的な行動をとる人間を減少させる目的で作られ、実際に多くの実績を上げてきました。
少年は初めての友人である『フレンズ』にロボ助と名づけました。
ロボ助は明るく好奇心旺盛な性格で、引っ込み思案な少年は自分を引っ張ってくれるロボ助と共に過ごすことが好きになりました。
まわりをよく観察している子どもは人との摩擦に敏感です。
少年も、人と意見がぶつかるのに恐怖を覚え、自分の思ったことを言えませんでした。
ロボ助はロボットらしい見た目をしているため、お人形に話しかけるように、どんなつまらない話でも口に出すことができました。
優れた友人としての役目を持つロボ助は、そんな少年の理解者となり、少年に共感し、彼の個性を尊重し、考える力を身につける手助けをする存在なりました。
しかし、『フレンズ』には制約がありました。
それは、主人公だけのために作られ、ある期間が経過すると処分されなければならないというものでした。
このことは少年にも告げられます。成長を促すためのロボットは別れを経験させるまでがプログラムの一環となっているためです。
ロボ助との別れは7歳が近づくにつれ、少年の心に重くのしかかりました。
彼の生活にロボ助は欠かせない存在となっていて、離れ離れになるという事実を受け入れられずにいました。
最後の一週間、両親は少年にロボ助との残りの時間を大切にするようにと声を掛けます。
少年は耳を貸さず、分かれる前日までロボ助とも会話をすることをやめてしまいました。
父親が優しく語ります。父親の手には古いタイプの電光ノートが握られていました。
「僕もフレンズと別れるのがすごくつらかったんだ。フレンズと忘れないために僕は思い出をノートにまとめたんだ。何日もかけてね。君はあの時の僕に似ているよ」
父親は手に持っていたノートを少年の手にそっとのせました。
ページを開き、少年だった頃の父の書いた拙い文字が浮かび上がります。
少年はその文章を自分の思い出と重ね合わせて、泣きながら読み続けました。
別れの日、少年はロボ助と昔話を振り返り、笑い合い、そして涙を流しました。
「君との思い出はこのノートにぜんぶ書くから!」
少年は感謝を伝え、ロボ助が政府の人と去っていくのを見送りました。
それから、3か月の時が過ぎ、新しい『フレンズ』をお迎えする日になりました。
玄関が来訪者を伝えると、少年はノートを強く握りしめたまま、玄関へ駆け出し自ら扉を開けました。