もてなしフレンミー

ショートショート

「お邪魔しまーす」

「リビングに適当に座っといて、今飲み物の準備するから」

「さんきゅー」

俺はリビングのクッションに体重を預け、座りテーブルに買ってきたつまみの袋を置いた。

「昨日の残りなんだけど野菜炒めあるわ」

「いいね。つまみにしよう」

友人がレンジに野菜炒めをいれる。彼は両手にビールをもってテーブルの向かい側に座った。

手渡されたビールのフタをあけてに流しこむ。喉につたう炭酸の刺激が気持ちよかった。

俺は落ち着いたふりが玄関になり、一度深呼吸をした。昨日のことを脳内で再生し、彼に向って伝える。

「どういう状況!?」

思わず大きい声になってしまった。彼はびくりともせず、こっちを「どうした?」というふうに見つめている。

「昨日戦ったよね」

「そうだな」

短い返事だった。

こいつに説明しなくちゃいけないのか?

俺は今の状況の異様さを伝えるため、昨日の出来事を振り返った。

ヒーローとして俺は活動している。昨日は怪人たちのアジトの一つに乗り込んだ。

怪人たちを倒し、アジトの最深部へと進むと彼が現われた。今目の前にいる友人だ。

俺は敵組織のマークが描かれた白衣を着ている彼に説明を求めた。洗脳されているのか。
やむを得ない事情があり、従わされているのか。

だが彼は敵組織の設立当初からの古株であり、幹部としてそれなりの給料をもらっていると返してきた。

言葉を失った。

親友とさえ思っていた友人がまさか敵対する組織の一員だったなんて。

俺は顔を隠すタイプのヒーローではないので、友人はずっと俺が敵対していることを分かっていたということもショックだった。

ショックや怒りで、ヒーローパンチを地面に向けて放ち、アジトを木っ端みじんにした。

それから日が昇り、今日の午前中に彼から「うちで映画みようぜ」と連絡がきた。

彼の家で映画を観るのはしょっちゅうあることだったが、「昨日の今日で!」というツッコミがつい漏れてしまった。

そして、今に至る。彼に昨日の出来事と俺の感想を語ってみた。

「まあ俺はプライベートと仕事を完全に分けるタイプだから」

友人は一言で俺の疑問に答えた。彼にとっては答えになっているんだろうが俺は混乱した。

仕事できるタイプの人だ、と素っ頓狂な考えがよぎったほどである。

「プライベートではこれからもよろしく」

彼は本気でそう言っているようだった。頭が痛くなってきた。

映画を見る気分になれず俺は立ち上がった。

「ああ。今日はもう帰るよ」

「そっか。___そうだ、明日は隣町の港へ襲撃の予定があるから。俺も現場に行く予定になっている」

「やりづらい!!」

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