ひりつくテトリス

ショートショート

ポケットから落ちそうなエコバックを手で押さえながら、夕食を買いにスーパーまで歩いていた。

「おや?」と立ち止まる。ゲームセンターを見つけた。今まで気づかなかったのは2階にそれがあったからだ。
1階はコンビニになっていて、上のお店など気にしたことがなかった。俺は静電気に吸い寄せられる紙切れのように、ふらりとそのゲーセンに足を運んだ。

脇にある急な階段を上ると、薄暗い小さなゲーセンが現れた。
俺は店内を見渡して驚いた。音ゲーや麻雀、そしてレトロゲームの筐体が並んでいたのだ。

「テトリスか。懐かしいな。」

俺はテトリスの筐体に腰を下ろすと、財布から100円玉を取り出して筐体に投入した。

見覚えのある青い画面に、四角や棒、L字型のブロックが落ちてくる。昔、友達と競い合ったことを思い出し、軽い気持ちでスタートボタンを押した。

最初はゆっくりと落ちてくるブロックを気楽に回転させ、順調に積み上げていく。だが、次第に速度が上がり、頭の中で計算する余裕がなくなっていく。
次から次へと落ちてくるブロックを、わずかな猶予で回転させ、ピタッと揃えて消す。それが、予想以上に心地よかった。

「ああ、しまった」

つい声を出してしまう。ブロックの速度があがり、余計なところに棒をおいてしまった。そこからリカバリーできずにゲームオーバーになる。

「もう一回だけ」

財布から100円玉を取り出して、また投入する。

降る。
回る。
落ちる。
消える。

単純な動作の繰り返しだが、何かが彼を突き動かしていた。

「くっ、ここで棒が来ないか…!」

「もう一本、もう一本…頼む!」

「ダメだ、これは、もう…」

少しでも冷静になろうとするが、気づけば100円玉がまた筐体に消えていた。時間を忘れて、ゲームにのめり込む。
ミスはするが、そのたびスコアは伸びていた。成長の手ごたえにもう一回、と何度も財布に手が伸びる。

だが、無情にもゲームオーバーの音が響く。大きく息を吐き、ふと時計を見た。時刻は22時を過ぎていた。

「えっ、こんな時間に…?」

慌てて席を立ち。腰を左右に動かす。ポキ、ポキと音をたて、長く座っていたことを実感する。

「たかがテトリスに、こんなに熱くなるとはな…。」

この時間にはスーパーはもうしまっている。僕はコンビニに向かった。

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