「グロいだけの、内容のない映画だ」
「今年のNo.1のクソ映画だったね」
駅ビル内にある映画館から友人と映画の感想を言いながら外への通路を歩く。
著作権が切れたマスコットをホラー映画で起用する、と大々的に宣伝していた映画を観てきた。
映画館で観るほどのものではなかった、と正直思う。まあ、友人とこれから楽しく批評するし、いいか。
駅ビルを出て時だった。通行人の流れがやけに悪いように感じた。
「事故かな」
友人がいち早く、状況を理解しようと前に出た。
俺はキョロキョロとまわりを確認しつつ友人のもとへ向かう。駅のロータリーで人が倒れていた。
ロータリーを見下ろせる位置で、その人を観察する。血を流し仰向けになってピクリとも動いていない。
その人を少し遠くから眺めるように人だかりができている。
手には皆スマホを持っていて、写真を撮る。心配よりも真剣な顔といった感じだった。
サイレンの音が遠くから聞こえる。だれかがすでに救急車を呼んでいたみたいだ。
人だかりは動こうとはしない。
人だかりは写真を撮っている。倒れている人のそばには足跡のない綺麗な血だまりがあった。
僕らは人の血を見ることだけには慣れ過ぎていた。