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篩の国

絶叫と、鈍い音――硬いスイカを叩き割るような音が響いた。隣の家の男が選別の対象になったらしい。この国では、誰もが定期的に「選別」を受ける可能性がある。選別は全市民を対象に行われ、その結果によって人生が決まる。選ばれた者は社会の上位層に進むこ...
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曖昧な値段

裏通りを歩いていると、見慣れない看板が目に飛び込んできた。その看板には、赤い文字で「50分 11(?),000円」と書かれていた。?の部分は剥がれたような跡があり、1の上の部分が消えていた。「1?000円…か。」僕は立ち止まり、しばらくその...
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たいきんで たかっとび

「こんばんは、先生。突然の訪問をお許しください」和久井は丁寧な口調で挨拶したが、その目は油断なく周囲を観察している。博士は少し驚いたようだが、すぐに微笑んで彼を招き入れた。「ようこそ。どうぞお入りください。確か、先日の学会の会場でお会いした...
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即決法

この国では、すべての決定が「即決法」に基づいて行われる。 即決法とは、議会に持ち込まれたすべての問題を、わずか一分以内に解決しなければならない法律だ。理屈や細かい議論は時間の無駄とされ、直感的に「良いか悪いか」を判断するのがこの国の方針であ...
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ソープフラワー

「なあ、ちょっと寄っていこうぜ」 友人が、にやりと笑いながら指をさす。僕らは昨日から2泊3日の旅行に来ていた。早めに夕食を取ったせいで、小腹が空いていた。俺たちはホテルに帰る途中にあったデパートの地下に寄ることにした。彼が指さすのは、カーテ...
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窓カエル

カエルの裏面を毎日眺める。 コンビニ弁当をぶら下げて、僕はアパートに帰宅した。最近は、また少し弁当が高くなった。追加でおにぎりを買うか悩んで、やっぱり買えばよかったと靴を脱ぎながら思った。 弁当を電子レンジに入れる。温めにかかる5分間で、僕...
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歯ごたえのないもやし

昼寝のつもりが、目を覚ましたときにはすでに19時を回っていた。薄暗くなった部屋の中、リモコンを探す。手元にそれはあった。 「明日は日曜日だし、別にいいか」と呟いて、体を伸ばす。肩や背中がパキパキと鳴り、若さのかけらもないあくびが洩れた。 空...
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桃太郎面接

桃太郎は鬼退治の準備の一環として、お供を選ぶ面接を行っていた。大人に勝る力と剣術をもつ彼も、戦いにおいては一人では心もとない。そこで、信頼できる仲間を選ぶために、近隣の村々から応募者を募った。「本日はよろしくお願いします」会場には、腕に覚え...
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廃遊園地

遊園地の一角にあるメリーゴーランドの上に2羽のカラスが止まりました。カラスのコウとミドリは、ほこりをかぶったジェットコースター。さびれたレール。音のしない暗闇のゲームコーナーを見渡しながら羽を休めます。「ずいぶんと寂れてるなぁ。なあ、ミドリ...
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後ろの席のカップルさん

「飲みたいなー」その友人の一言は僕も賛成だった。友人と二人で旅行に来て2日目の夜、適当なところで酒を飲むことにした。銀だこが目に留まったのでそこへ入る。銀だこは、たこ焼きを売っている屋台のようなイメージだったので店を構えているのにまず驚き、...