インテリエクスキューズ

こんにちは、ええ、お父さんから話は聞いていますよ。
学生時代はなにかと悩みも多いでしょう。

青春の手助けになるようなものも、ここにはあると思いますよ。
どんなものが欲しいですか? 

勉強がはかどる文房具? 運動能力を一時的に向上させる薬?
それとも、気になるあの子の好感度がわかるスコープ?

えっ? 言い訳が上手くなる道具ですか?

言い分を話しても、余計怒られるだけで困っている。
なるほど。怒られないように反省すればいいのでは?

それはできない? なるほどクラスで一人はいる、先生にも軽口叩けるお調子者ポジションなのですか。
どんな時代にもいるもんですね。そういうタイプは。

いいえ。わかりますよ。
私にも若いころがありました。
君の要望に応えられそうな発明品があります。
すぐ持ってきます。ちょっと待っててください。

ありました。こちらの発明品は『インテリエクスキューズ』です。
ええ、伊達メガネですよ。シンプルなデザインでオシャレでしょう。

これは言い訳が必要なときにグラスの内側に文章が現われます。
メガネをかけている本人からすると、視界の空中に大きな文章が浮かんでいる状態ですね。

相手の言葉に反応して、相手を怒らせずに自分をもっとも弁護してくれるような文章を生成してくれるんです。
これなら、お説教の時間も大幅に短縮することができると思いますよ。便利でしょう?

さらに反省文にも対応していますよ。文字に対してもモードを切り替えることで、文章を組み上げてくれて自分はただその文字たちをなぞるだけでいい。

あと、これはあまり使わない方がいいと思いますが、もう一つの論破モードについても説明しましょう。
眼鏡越しに浮かぶ文章が相手を論破する文章になるモードです。ええ、そのままですね。

正論は人を怒らせるだけなので、このモードを使うことはお勧めしません。
このモードを試して、殴られること必至です。経験者が語るので間違いありません。

興味持っていただけましたか?
とはいえ、使ってみないとわかりませんよね。

しばらくその発明品はお貸しします。
1か月ほど使ってみて、使えるのならご購入を検討していただけると。
いいえ、お礼なんていいですよ。青い春を応援したくなる老婆心のようなものです。

おや、こんにちは。まだ1週間ほどですが、どうかしましたか?
これからは真面目に怒られない自分を目指すことにしたのですか? これはもういらない?
もう少し使っていただいてからのほうが、はあ。

なるほど、どれどれ、エラーが起きてますね。文章が消えていない。負荷をかけ過ぎたのが原因ですかね。
それにしても、ひどいですね。視界がほぼ真っ黒になっているじゃないですか?

どれだけ怒られるようなことをしたんですか?
あーいえ。ええ、言い訳は結構ですよ。

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